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理想を現実にするヨットの近道

町で何人かの人間を捕まえてきて、たとえば2,4,3,5,1,8,3という数字をこの順序で暗記するように言うと、たいていの人は少なくともしばらくのあいだはこの数列を正確に憶えている。 実験の結果、被験者のあいだには記憶力にばらつきがあることがわかった。
8つないしは9つの数字を記憶できる人もいれば、同じ割合で5つないし6つの数字しか記憶できない人もいる。 そこでミラーは、全人口のほぼすべての人が7プラス/マイナス2の幅で数列を記憶できると推測したのである。

だが、ミラーの考えは数列だけにとどまるものではなかった。 数字以外のデータにもあてはまるのだ。
たとえば、多くの人間は名前や数字、室内ゲームのヒントといった類似したデータを、憶えたてなら7つぐらいまでは記憶できる。 私たちが電話をかけるときにも、ミラーの研究の恩恵にあずかっている。
AT&Tが電話番号を7桁に決めたのも、ミラーの理論を考慮してのことだった。 もっと桁を増やせば、市外局番をなくすことがき。
かしそうなると、いったん番号を書き留めてからでないと誰も電話をかけられなくなってしまうだろう。 市外局番でさえ、ミラーの研究の別な側面を利用している。
彼は、情報をいくつかに分割すれば、人間はより多くの情報を短期間、記憶できることを発見した。 ミラーはこの情報の断片をかたまりと呼んでいる。
もし私がうちの電話番号は(415)33,0555だと言ったとすると、あなたはおそらく市外局番を独立した情報のチャンクとして記憶するはずだ。 そこで、それに続く7桁の番号を、市外局番に影響されずに記憶できるのである。

なお、この番号は本当の番号なので、いつでもお好きなときにおかけください。 市外局番は、それぞれは何の関連もない一桁の数字がランダムにつながったもの、たとえば4、1、5として記憶されるわけではない。
地理や電話システムの知識と関連づけられて、ひと固まりの3桁の数字、415として記憶されるのである9人間はその内容に従って情報を記憶したり、思い出したりする。 「なぜニワトリは道を渡ったのでしょうか〜」と「カーネギーホールには、どう行けばいいのですか〜」を間違えることがないのも、ジョークをオチできちんと記憶しているからだ。
また、自分の家への帰り道を憶えているからといって、トイレへの道順を思い出せないなどということはありえない。 これも同じ理由だ。
情報はその内容ごとにワンセットにされ、別々なチャンクとして記憶されるのである。 優れたチェスプレイヤーは、ゲームの進行を高度に抽象化し、ある種のチャンクとして記憶している。
盤上にあるすべてのコマの動きを、記憶しているわけではないのだ。 私たちが基本的定義を知らなくても文法の規則を直観的に使えるように、彼らはコマの動きを流れとして捉えているのである。
しかし最高のプレイヤーは、これとはまったく違った指し方をする。 彼らは、苦もなくすべてのコマの位置を記ミラーは、多くの統計学的研究と同じく、ランダムに選んだ1100〜300人の被験者が世界の総人口の傾向を表すと考えた。
そのほうが世界中を調査してまわるより安あがりだし、だからといって著しく精度に欠けるわけでもない。 ミラーは研究のサンプルになった人々も、世界中の人々も、どちらも「正規」であると確信していた。
この研究は、そうした彼の確信の上に成り立っている。 正規というのは統計学用語で、母集団はそこから抽出した少数のランダムなサンプルによって正確に一般化できるということを意味している。

釣鐘型曲線や標準偏差について長ったらしい説明はしたくない。 J・ミラーと私が、これは全人口の99・7パーセントの人々が7つ(プラス/マイナスニつ)の数字を記憶できることを意味するそこで、私が考えたアメリカを技術大国に引き戻すプランを披露しよう。
短期記憶コンテストを開催するのである。 ブックマッチに広告を載せている通信教育の美術学校、あるいは女性誌や「ポピュラー・メカニクス」誌に載っている広告のような方法で、このコンテストを実施しようと思う。
要するに、あの「あなたもペットの絵を描いてみよう」というやつである。 と言っているのだから、とにかくそれを信じてほしい。
当然、0.3パーセント、つまり1000人中3人は例外で、こうした人々は数字を4つ以下しか記憶できないか、あるいは10以上記憶できることになる。 正規分布の信奉者ならおわかりだろうが、これは対称的に分布することになっていて、数字を4つ以下しか記憶できない人は10以上記憶できる人と同人数存在するということを意味している。
実際、数字を一つも記憶できない学習障害の人も存在するのだから、ミラーのテストを受けたなかで0.15パーセント、2000人中3人が4つ以下の数字しか記憶できないとしてもなんら不思議はない。 この3人がコンピュータプログラマになることなどあり得ないのだ。
私たちが関心を持っているのは、釣鐘型曲線の反対側にいる0.15パーセント、10以上の数字を記憶できる11000人中3人のほうである。 アメリカにはそういった人々が約37万5000人存在し、その大半がすばらしいコンピュータプログラマになる可能性を持っている。
ただし、発見できれぱの話だが。 私たちのブックマッチには「3の数字を憶えるだけで、大金が手に入る!」と、こんなふうに書く。
待った、もっといいアイデアがあるぞ!このコンテストを全米ネットのテレビ局で生放送するのだ。 900番に電話をかければ、視聴者は一回につき数ドルでコンテストに参加できる。
これで、潜在的なトップクラスのプログラマが何千人も見つかるだろう。 現在はワイオミング州のシャイアンあたりでトラック運転手や綿繰り機の操作係、美容師といった世をしのぶかりの姿で暮らしている彼らは、プログラムを書くべくして生まれてきた天性のプログラマである。
参加者の一パーセント以下しか勝てないことが初めからわかっているのだから、この番組はスポンサーすら必要としない。 そして、この計画の最も優れている点は、これが私のアイデアだということだ。

これで私も金持ちになれる!こうした私の夢の栄光は、最高のコンピュータプログラマやハードウェアデザイナーはそのほとんどすべてが、短期記憶力を示す釣鐘型曲線の右側に集まっているというJ・ミラーの説を前提にしている。 ただし、これは10以上の数字を一度に記憶できる能力は、コンピュータプログラムを書くための必要条件というわけではない。
一度に10以上の数字を記憶できる能力は、非常に優れたコンピュータプログラムを書く前提条件になり得るというだけのことである。 ソフトウェアを書いたりコンピュータのハードウェアを設計したりするには、プログラムやマシン全体にわたる複雑なデータの流れを常に把握することが要求される。
そこで、一度に多くのデータをメモリに保持する能力が非常に役に立つのだ。 ここで言っているのはコンピュータのメモリではなく、プログラマのメモリのことである。
最高のプログラマというのは、複雑なことをたやすく記憶できるものだ。 世界で最も偉大なプログラマの一人であるC・Sは、かつて年齢のせいで記憶力が衰えつつあると嘆いていた。

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